勢いのある株は上がるのか
340銘柄・11年・45,321件で数えたところ、「勢い」の強さと20営業日後の値動きには関係がありませんでした。 勢いがいちばん強い帯といちばん弱い帯の差は+0.29ポイント(p=0.31)で、偶然の範囲です。
勢いの帯ごとの、20営業日後
勢いは0〜100点。20点ずつ5つの帯に分け、それぞれの銘柄がその20営業日後にどうなっていたかを集計しました(重ならない標本・138日・45,321件)。
| 勢いの帯 | n | 20日後平均 | 中央値 | 上昇率 | 全体との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0-19 | 2,912 | +1.01% | +0.27% | 50.7% | −0.19pt |
| 20-39 | 12,200 | +1.24% | +0.75% | 53.9% | +0.04pt |
| 40-59 | 15,469 | +1.21% | +0.89% | 54.7% | +0.01pt |
| 60-79 | 11,245 | +1.17% | +0.71% | 53.8% | −0.04pt |
| 80-100 | 3,495 | +1.30% | +0.85% | 54.7% | +0.10pt |
全体(5つの帯をまとめた平均)は+1.20%。勢いの順位と20日後の値動きの順位相関は0.007(p=0.15)でした。
「勢い」をどう測ったか
よく言われる「勢いのある株」を、4つの数字で表しました。出来高が直近20日平均の何倍か、20営業日前からの騰落率、52週高値からの距離、25日移動平均線からの乖離です。どれも「大きいほど勢いがある」側に向けています。
4つとも、その日の340銘柄の中で何番目にあたるか(パーセンタイル)に直し、平均して0〜100点にしました。株価の水準や銘柄の大きさに左右されず、「その日の中で相対的に勢いがあるか」だけを見るためです。計算式は、株レーダーの銘柄ページに毎日出している値(出来高倍率・20日騰落など)と同じです。
判断には、20営業日おきに間引いた「重ならない標本」を使いました。毎日を全部数えると、ある日の20日後と翌日の20日後はほとんど同じ期間になり、同じ値動きを何十回も数えてしまいます。そうすると件数だけが膨らんで、偶然の差でも「統計的に意味がある」ように見えてしまいます。138日ぶんに間引くと、各期間が重なりません。
1つずつ見ても、関係はゼロでした
4つが打ち消し合って関係が消えているのではないか、と考えて、1つずつ測りました。出来高倍率・20日騰落・52週高値からの距離・25日線乖離のどれも、単独で20日後の値動きとの関係はほぼゼロでした(順位相関は0.002〜0.007、p値はいずれも0.11以上)。打ち消し合いではなく、それぞれに関係がありません。
動きの大きさで見ると、U字でした
上がるかどうか(方向)ではなく、どれだけ大きく動くかで見ると、形が違いました。20営業日後の値動きの大きさ(上げ下げを問わない幅)は、いちばん勢いの弱い帯が全体の1.21倍でいちばん大きく、真ん中の帯が0.95倍、いちばん強い帯が1.06倍。両端が動きやすいU字です。「勢いが強いほど大きく動く」とも言えませんでした。
5日後だけは並んだ。でも、追いかけませんでした
期間を変えて測ると、5営業日後だけは勢いの順に並びました(弱い帯−0.28%から強い帯+0.05%まで、p=0.038)。ただし差は0.33ポイントと小さく、ここまでに何通りもの検定を重ねた後での結果です。条件を変えて何度も測れば、どこかで1つは偶然「効いている」結果が出ます。60営業日後では並びませんでした。
ここで「5日後なら効く」と言い直すのは、当たるまで検証の条件を変える行為です。最初に決めた20営業日後で関係がなかった、という結果をそのまま載せます。
株レーダーでは、勢い・需給・業績などを点数にして、銘柄の「エネルギー」として五角形で見せる機能を作りかけていました。その公開前の確認としてこの検証を行い、勢いと20日後の値動きに関係がないと分かったので、公開をやめました。関係がないと分かった数字を点数にして見せれば、注記を付けても「高いほど上がる」と読まれてしまうからです。
データの出所と、やったこと
- 対象: 運営者のスキャナーが毎日見ている340銘柄のうち、株価を取得できた337銘柄。いずれも現在上場している銘柄です
- 期間: 2015年6月〜2026年10月(日足・調整後株価)
- 株価: Yahoo! Finance の日足
- 測ったもの: 勢いを計算した日の終値から、20営業日後の終値までの騰落率
- 標本: 20営業日おきの重ならない標本(138日・45,321件)で判断。参考として毎日の標本(2,750営業日・903,263件)でも集計しましたが、こちらでもむしろ勢いが強いほどわずかに低く(最も弱い帯+1.37%、最も強い帯+1.18%)、勢いの順には並びませんでした
この数字の限界
- 生存者バイアスがあります。対象は「いま上場している銘柄」だけで、この11年の間に上場廃止になった銘柄は入っていません。消えた銘柄を含めないので、統計は全体に良く見える側に偏ります。その偏りがあってなお、勢いの強さとの関係は出ませんでした
- 「勢い」の定義はこの1つだけです。4つの数字の選び方や、20営業日という期間を変えれば結果は変わりえます。ただ、結果を見てから定義を変えることはしていません
- 何通りもの検定を重ねています。p<0.05の結果が1つ出ても、偶然と区別できません(上の5日後がそれにあたります)
- 「関係がなかった」は「上がるか下がるかに勢いが役立たなかった」という意味で、勢いのある株が下がる、という意味ではありません
- 過去にこうだったという記録であって、次にどうなるかを示すものではありません